「世の中に律はできる。
律の中に世はできない。
善くも悪くも、あの子は律だった。
あの人のふわりふわりしたなにわの世で、あの子はしゃんとした律だった。
だからあの子は、三成は、きっと世にはなれない」
至言だと、島左近は腹のそこから胸のおくから思えてならなかった。
ならばこそと心身を律す。
そうすることで石田三成の世がここにひとつ築かれる。そう信じたかった。
「おねねさまにおかれましては、いつまでも息災であられますように、と」
殿が、と言いかけて言葉に詰まる。
いかん。と気付いた。
これ以上は涙が落ちる。
左近は年甲斐もなく目頭をぐっと指で押さえた。
朝に道を聞こうとも
夕べに死すことはない