ごうごうと田畑が燃えている。その炎の合間を縫って兵たちが稲薙ぎをしている。
あとニ、三日もすればかたもつく。
三成は赤い城を自陣から眺めて一方ではそのようなことを考えていた。
不意に、ざりり。土が鳴る。
三成はちらりとそちらを見遣った。
「考え事を当てましょうか」
横に立ったのは島左近であった。肩には軽々斬馬刀を担いでいる。
この男は人の心を言い当てるのが好きだった。
軍師の悪い癖だ。三成は目を戻した。
その上いやだと言えば余計に嬉々として当てようとするのだから意地が悪い。
「この田から、この畑から、どれほど実るか。どれほど兵と民を賄えるか」
どうです、と左近は楽しげにこちらを伺ってきた。
三成は帯から抜いた扇で降る火の粉を払う。
「殿」
そう言った左近は、目を細めたままであったが、三成を見据えていた。
「勝つためです」
左近の声音は時折ひどくずしりとする。
三成は、ぱちん、と扇を閉じた。
ごうごうと燃え盛る火の粉が左近にも、そうして今は三成にも降りかかる。
「違うな」
と三成は言った。
「いくさなき世を造るためだ」
炎に呑まれてゆく田畑、落ちる城、逃げ惑う人。その先を三成は見据えている。
だが、あまっちょろい、と隣のいくさ人は思ったであろう。
「お前はきっと思っただろう」
そう言えば、「おっしゃる通りで」と左近はいけしゃあしゃあと悪びれない。
三成は鉄扇を高く掲げた。
「だがいくさに勝つために田畑を焼け稲薙ぎをせよと言うおれの隣に島左近はおるまいよ」
鬨の声が今上がる。
その士、その心